富山県寄附講義「観光概論」で全盲の文化人類学者・広瀬浩二郎氏が講演
11月16日(木)の富山県寄附講義「観光概論」において、全盲の文化人類学者であり、国立民族学博物館教授の広瀬浩二郎氏による「目で見ず、身体でみる風景-ユニバーサルな鑑賞・観光・感動のために」と題した講演が開催されました。「全盲のフィールドワーカー」を自称する広瀬氏は、13歳の時に失明。その後、筑波大学附属盲学校から京都大学に進学し、2000年に同大学院にて文学博士号を取得され、現在は日本宗教史、触文化論などをテーマに研究されています。
近年では、「ユニバーサル・ミュージアム」(誰もが楽しめる博物館)の実践的研究に取り組み、2021年・秋に国立民族学博物館において特別展「ユニバーサル・ミュージアム: さわる!“触”の大博覧会」を開催するなど“触”をテーマとする各種イベントを全国で企画・実施されています。また、『世界はさわらないとわからない』(平凡社新書)ほか、最新刊『よく見る人とよく聴く人-共生のためのコミュニケーション手法』(岩波ジュニア新書)、『ユニバーサル・ミュージアムへのいざない-思考と実践のフィールドから』(三元社)など著書も多数執筆されています。
今回の講義では、スマホの汎用化が示すように視覚情報に支配されている現代社会において、これまで同氏が博物館で続けてきた「さわる展示」の実践を通じ、「身体でみる」大切さと奥深さについてご紹介いただきました。
「講義を通じて、ユニバーサルな(誰もが楽しめる)鑑賞・観光の可能性を富山から発信したい」とのことでしたが、講義後、学生からは「今後は、ただ見るのではなく、色々な感覚を使って見ていきたい」「視覚以外の感覚を通して楽しむことで、今まで気づかなかったことに気づけることを学べた」などのコメントが寄せられ、五感を使って対象を捉えることが新たな観光の可能性や新たな社会のあり方について考えるヒントになることが伝わっていたようです。
※講演の様子は、北陸中日新聞2023年11月17日付朝刊でも紹介されました。